動物の皮を加工して革にするにはとても多くの加工が必要です。
ここでは、革ができるまでの工程を簡単にご紹介します。
原皮は塩漬けや乾燥処理をされて工場へ入ってきます。
その皮に水分を戻しながら洗います。牛や馬などの大判の皮は作業をしやすいようにここで「背割り」を行い、その後、裏打ち(付着している肉片や脂肪の除去)、「脱毛」、「石灰漬け」によりコラーゲン繊維をほぐし、脱灰・酵解によりpHの中和、不要なタンパク質の分解、浸酸(クロム鞣しの場合)などを行い、「皮」としての最後の処理をします。
鞣し剤を皮に浸透させることで、耐熱性、耐久性を与えます。多くはタイコ(ドラム)と呼ばれる回転式浴槽で行われますが、ピットと呼ばれるプールに漬け込む方法もあります。ここで「皮」は「革」へ生まれ変わるのです。
その後、余分な水分を除き、選別後、シェービング(厚さの調整)を行います。そして用途が決まった革に対して適した状態にするための再鞣しや、革の基本色をつける染色や加脂を行います。
セッティングマシンにより水分を取り除くとともに革を伸ばし、乾燥させていきます。乾燥は自然乾燥から「真空乾燥」「ネット張り乾燥」といった強制乾燥まであります。その間に「味入れ」(適当な水分を与え揉みほぐしやすくする)、「ステーキング」(マシンによるほぐし)、「銀むき」などを行い、革に弾力性や柔軟性を与えながら目的の革へと仕上げていきます。鞣しや原皮の種類によってその作業は変わります。
塗装は、革の表面に皮膜を形成させることで最終的な仕上げとなる重要な工程です。染色で色づけされた革でも最終の色調整として行います。
色、艶、風合い、また撥水性や耐久性といった性能の付加もここで行います。その後、ポリッシングマシンやグレージングマシンによる艶出しやアイロン・型押しといった仕上げタイプによって加工を行い、計量、検査を行い出荷されていきます。
「鞣す」という漢字は、革を柔らかくすると書き、文字通り皮を柔らかくし、耐久性や耐熱性を高める加工方法です。
言うまでもなく動物の皮は天然素材であり、それゆえに同じものは1枚としてなく、個体によってそれぞれ厚さや硬さが異なります。そのためそれぞれの革に同じ加工を施した場合、1枚ごとに品質が異なる商品が出来上がります。しかし製品素材としての需要に応えるためには、別々の革を同じ品質で供給することが求められます。
タンナーとは個々の「皮」の特性を見抜き、長年培ってきた技術を駆使して皮を鞣し、個別に調整を行うことで同じ品質の「革」を創り出すプロフェッショナルなのです。
クロム化合物や、塩基性硫酸クロム塩とよばれる化学薬品を使用した方法で、1858年にドイツで発明され1893年にアメリカで実用化された比較的新しい技術です。大きな回転式のドラムに、皮とクロム鞣剤を入れて容器を回転させながら皮になめし剤を浸透させていきます。以前より使用されていたタンニンなめしと比べて処理時間が短く、世界の革の8割はクロムなめしの革といわれています。
丈夫で厚みが薄くても強度があり、軽量化できるのが特徴です。他の革と比較して熱や火にも強さを持っています。また、染色性が高く発色性があるのでカラーバーリエーションが豊富です。ただタンニンを含まないのでヌメ革のようなエイジングによる革の風合いの変化は期待できません。
タンニンなめしとクロムなめしそれぞれの加工法の欠点を補い、長所を取り入れたハイブリットな鞣し方法です。その相乗効果によって、エイジングの経年変化で風合いを楽しむことができ、耐久性のある革が人気を集めています。使用する鞣し剤の比率によって、仕上がり方に変化が生まれます。
エイジングについて言えばタンニンなめしには劣り、また耐熱性ではクロムなめしの革には劣ります。両方の特徴をバランスよくもったなめし方と言えます。
革の厚みを調整するシェービングを行った革の内部に「染料」をしみこませ、革全体を染めていきます。また色を決めるだけではなく、お客様の要望に合わせて革の細かい質感を決める工程になります。
クロム鞣しを行うと革は淡い青色になります。そこで革を目的の色にするために、鞣しの時にも使用したタイコという回転式浴槽の中に革と染料液を入れて回転させることで染料を革の内部まで浸透させ、革に基本色をつけていきます。
革の製造の最終的な色を決める重要な工程が塗装です。
染色工程で内部への色付けがされた革の表面に「染料」や「顔料」を吹き付け、色の調整を行います。
塗装の工程は最低でも2回以上、場合によっては10回を超えることもあります。